【過労死等防止対策について考える】
先月21日「過労死等防止対策推進シンポジウム」に出席させて頂きました。不幸にも過労死で大事なご家族を亡くされたご遺族の生の声を直接聞いてみたいと思ったからです。
今回、参加されたご遺族は2015年の12月25日に長時間労働やハラスメントによる心的負担、精神疾患を理由に自死され、後に労災認定された高橋まつりさんのお母様でした。
高橋まつりさんの不幸な出来事は、当時ニュースで大きく取り上げられ、現在の「働き方改革」の法整備にも大きく関係しております。 ある程度の情報は、当時知っていたつもりでしたが、今回の資料で提供された自死される数カ月前からのSNSでのやり取りや勤務先のビルにおける入退館システムに記録された時間など、業務を理由に体力的にも精神的にも過労が蓄積され続けた我が子を救えなかった親としての無念が強く伝わり、涙なしには聞けない話でした。
正確な労働時間が把握されず、残業隠しを含めた職場での拘束時間が連続40時間を超えたり、家に戻っても半ば強制的に仕事に関する資料作りや準備に時間を奪われ、1日の睡眠 時間が2、3時間しかない状態、さらに新入 社員に対しての配慮も足りないまま業務能力 に対する非難が蓄積されれば、体力的にも 精神的にも追い詰められるのは当然であると 感じました。また自死直前に自分の時間を 犠牲にして担当を命じられた忘年会について 後に上司から「段取りが悪い」と叱責された 彼女の心境は本当に絶望感で一杯であったと 想像されます。
私も過去の職務経験を振り返れば、連続勤務が長期で発生したり、繁忙期の24時間勤務、残業で退社が深夜になったことが何度もありました。当時は会社から評価されたい、出世したいという自らの行動もあったかもしれませんが、それが当たり前という風潮や職場環境、精神論の中で業務を強いられた部分もあり、その状態がさらに続いていた場合は、疲労の蓄積による過労で倒れていたかもしれません。
今回は高橋さんのお話以外にも過労死だけでなく、職場におけるパワーハラスメントや上司から無視され続けるモラルハラスメントを理由に自死された事例も聞かされ、少なからず私も過去に同じような経験をしたこと、さらには最近のニュースのように業務委託とはいえ、自死された劇団員さんの過酷な業務状況を踏まえれば、決して過去の出来事や他人事ではなく、法律が厳しくなった現在でも身近に起こりえる労務災害であると感じました。
労務に関する最低限の法律については、日頃から経営者さんや人事労務管理担当者さんのみならず、従業員さんも基礎知識として習得することが大変重要であると感じます。私はかつて業務中に包丁で怪我をした時「労災」について私自身知識が無知であり、周りの人も誰一人労災について教えてくれる人はいませんでした。先ほど述べた労働時間や休日のルールに関しても同じです。お互いが労務に関する法律やルールをひとつでも多く知ることにより、働きやすく風通しの良い職場や仕事に関する悩みについて気軽に相談出来る体制、仕事一辺倒ではないオンオフの時間が充実出来る働き方に繋がると感じます。
働き方に関する法律改正に大きな影響を与えた高橋まつりさんや今も過労死等防止のために活動をされている高橋さんのお母様など多くの遺族の方の意思を忘れることなく、専門家そして過去の経験を踏まえて人事労務管理についてのルールや法律順守の重要性をこれからも伝えなければならないと強く感じました。